起業塾というものがあります。
会社を辞めて起業したいと考えている人を支援してくれる塾です。
日本全国にたくさんの起業塾があり、起業準備のため起業塾に入ろうと考える人も多いと思います。
私も起業塾に入ったことがあるので、その体験を書いてみたいと思います。
藁をもつかむ思いで、起業塾の門を叩く
40歳になり、私はかなり焦っていました。
会社を辞めたい!
自分でビジネスをやって、自分で稼いで生活していきたい!
こういう思いを持ちながらも、なかなか会社を辞める勇気が出ずにズルズルと20年弱が経ってしまっていたのです。
結婚して子供も二人いるし、毎月の生活費も赤字スレスレ。僅かなボーナスに頼る毎日。40歳を越え体力も衰えを感じてきました。
起業するか、会社に留まるか。そろそろ決めないといけない時期が迫っていました。
いざ会社を辞めようとしても独身時代とは違って身軽には動けません。給料が無くなれば家族にも迷惑がかかります。社宅も出ないといけなくなります。
でも、このままサラリーマンでいるのはどうしても嫌でした。
このままでは駄目だ、なんとかしないといけない!と思っていたところに、30代後半以上が多く在籍しているという起業塾を見つけたのです。
ここに入れば自分と同じように40代で家族持ちで会社を辞めようと思っている人がいるかもしれないと思い、思い切って入ってみることにしました。
本当に藁をもつかむ思いでした。切羽詰まっていたのです。
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同じ年代の起業志望者と出会い安心する
お試しでセミナーに参加してみると、30代や40代の方が中心で、独身と既婚の比率が6対4ぐらいでした。50代や60代の人も多かったです。子供を抱えながらも起業を夢見ている人も少なからずいました。
セミナーに参加している人達は、現状の仕事や生活に疑問を感じている人、起業に興味ある人、起業準備中の人、起業のきっかけをつくりたい人、起業にまつわることをいろいろ聞きたい人が多かったです。
私も同様のことを感じていたので、自分と似たような人とたくさん知り合えてよかった、という安心感を感じました。
入塾費用は毎月2万円と決して安くはなかったのですが、会社を辞めて起業を成功させるための先行投資だと考えました。
起業塾の内容
その起業塾は、定期セミナーと個人コンサルの2つに分かれていました。
セミナー
セミナーの方は、毎月1回の定期開催で、30名ほどが参加していました。
自己紹介を兼ねてどんなビジネスをやりたいのかを発表し、他の参加者と名刺交換するというものでした。
セミナーといいつつも、ほとんど異業種交流会といっても良いぐらいの内容でした。(もちろんビジネスのテクニックなどの講義はありましたが、残念なことにあまり印象に残りませんでした)
個人コンサル
毎月1回1時間をかけて、対面で個人コンサルをしてもらっていました。
自分の事業の進捗状況確認がメインの内容です。前月に実施すると宣言した項目を次月キチンとやっているかをチェックしてもらっていました。
コンサルタントの方からたくさんアドバイスをいただきありがたかったのですが、思いのほかすれ違いが多くなってきました。
私はインターネット上でマーケットプレイスの運営ビジネスを考えていましたが、コンサルタントの方はその方面には疎く一般的なアドバイスしかもらえませんでした。
1年を過ぎた頃から、「コンサルの意味あるんだろうか? やることの確認だけなら自分ひとりでもできるのでは?」と疑問を感じることが多くなりました。
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起業塾で感じた違和感4つ
結局2年通いましたが、どうも肌が合わず辞めてしまいました。
起業塾そのものが自分には合わなかったようです。
1. 起業塾のアドバイス通りやって失敗しても自分の責任になる
一番の理由としては、起業というものは、そもそも人に教えられてやるものでないということです。
起業塾の講師からアドバイスを受けて始めたビジネスがもし失敗してしまったら、誰が責任とるのでしょうか。
講師の方は責任は取ってくれませんよね。せいぜい慰めの一言を言ってもらうのが関の山ではないでしょうか。
結局のところ、すべて自分が責任を負うことなるのです。
ビジネスというのは、自分で試行錯誤しながら手探りで進むべきものです。コンサルトの言うとおりにやって成功するならば、自分でやる意味ないです。
それならば、コンサルトに頼らずに最初から自分で考えて行動した方がよっぽど良いと思いました。たとえ失敗したとしても100%自分の責任にできるからです。
2. 起業塾で仲間はできなかった
毎月1回の名刺交換会では、合計300名を越すほどたくさんの方と出会うことができました。Facebookの友達数も200人ぐらい一挙に増えました。
そこで知り合った方々と一緒に勉強会や小規模なセミナーを開催したこともあります。新しい共同ビジネスを立ち上げようとミーティングしたこともありました。
でもそのような活動は単発で終わり、長続きすることはありませんでした。300名以上と名刺交換しましたが、起業塾を去った今でも交流が続いてる人は一人もいません。
結局、起業志望者と2年間起業ごっこをして遊んでいたようなものです。
関連記事 弱小仲間と永遠に「起業ごっこ」してるだけ!起業家予備軍の落とし穴
3. 魑魅魍魎の人たち
名刺交換会には、ネットワークビジネス、会計士などの士業、保険の営業マンが多く混ざっていました。
これらの人たちは、起業志望者をターゲットに商売しています。起業塾での名刺交換会は、ターゲット顧客を探す格好の場所になっているのです。
セミナーで知り合った人が一緒にビジネスを立ち上げようと誘ってきて、指定されたミーティング場所に行ってみたら高額の自己啓発セミナーだったこともありました。
スタバで集客の勉強会をするというので行ってみたら、ネットワークビジネスの勧誘だったこともありました。
その他にも、セラピスト、セミナー講師、占い師など起業志望者をターゲットにしている人たちがたくさん参加しています。
どの人たちも起業志望者相手の商売をしているので、注意しないといけません。
そのような人たち以外で、純粋に新しいビジネスを立ち上げようと考える人は、1割いるかいないかぐらいでした。まあでも、いたとしてもそのような人はすぐに辞めていきました。
4. 退職して起業するのが偉いという価値観
「会社を辞めることが第一」というスタンスに、ものすごく違和感を感じました。
「会社を辞めました」という発表をすると、参加者全員からおめでとうと祝福され、拍手されるのです。その起業塾では退職者が偉く、退職を渋っているものは臆病者という雰囲気がありました。このような雰囲気というのは、安易に退職することを煽っているようでとても危険だと思いました。
とはいっても起業塾なので、そのようなスタンスで良いとは思います。でもそれはメンタル面も含めてキチンと準備が固まったから退職した、というのがベースにあると思います。そういうことの説明もなく、ただ退職したから偉いといのはどうしても違和感を感じてしまいます。
起業するということは、やはり人生の一大イベントです。安易な気持ちで退職して失敗しても誰も責任は取ってくれません。無謀な退職を賞賛するものであってはならないと思うのです。
安易な雰囲気に流されずに、会社を辞めるリスクや失敗についても慎重にしっかり考える必要があると強く感じました。
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起業塾に通ってよかったこと
ここまで起業塾について感じた違和感をたくさん書きました。といっても起業塾を否定しているわけではありません。
人それぞれ起業塾に対する価値があると思います。
私には、一つだけ起業塾に通ったメリットがありました。
それは、実際に会社を辞める人を身近に見ることができたことです。
それまでは、会社を辞めることに対して現実感が全くありませんでした。勤めていた会社は割と家庭的な雰囲気の製造業だったので、途中で辞める人がほとんどいなかったのです。
そういう意味でも実際に退職した人から退職時の状況を直接聞けたのは良かったです。上司に退職をどう切り出したのか、引き止めはあったのか、家族の反応はどうだったのか・・・・・・。そういったことを聞いて、だんだん退職というものを具体的にイメージできるようになっていきました。
いままでは「退職」という言葉を自分で言うことすら抵抗を感じていました。そのため、家族にもなかなか「退職したい」ということを言えずじまいでしたが、徐々に抵抗感が薄くなっていったせいか、家族にも相談できるようになりました。
起業塾に通った当初はいろいろと違和感はありましが、結局のところ、退職についてイメージトレーニングができるようになったことが起業塾の一番の収穫でした。
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「起業」塾ではなく、「退職」塾
今から改めて考えてみると、退職した人から退職の話を聞くことで「起業のきっかけ」にはなったようです。
起業仲間は一人もできませんでしたし、起業に関しての成果はゼロでした。
私の印象としては、「起業」塾というより「退職」塾という方が実態に沿うのかな、という印象を持っています。実際のところ、一度退職してしまったら、起業塾の必要性を感じることは一切ありません。
起業する第一歩として、起業塾に入るのも別に悪いことではないと思います。もし起業塾を探すのであれば、失敗リスクに関してしっかり検討してくれる塾はもちろんのこと、自分のやりたい事業領域をカバーしてくれる塾を選ぶのが良いのではないでしょうか。
私のように焦って適当なところを選んでしまうと、起業ごっこしているだけだったり、魑魅魍魎の人達からカモにされるのが落ちなので、ヤバイと思ったらすぐに逃げてください。
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